では、私人間効力についてお話します。
あくまで、ある程度は勉強されているという前提でお話させて頂きます。ですから、ここでは、「復習+α」というスタンスでご理解ください。

私人間効力は、あくまで私人対私人の話であるということを確認しておきましょう。私人対国家権力では私人間効力の話にはなりません。

で、問題文では「最高裁の趣旨に照らし~」みたいな聞き方が多いので、まずは、最高裁の立場である「間接適用説」を理解しておく必要があります。

択一の肢では「直接適用説」や「国家同視説」が盛り込まれる可能性はありますが(実際に肢では出題されています)、まずは間接適用説をしっかりマスターしておかなければなりません。

間接適用説

私人間効力の間接適用説とは、私人対私人の場合は、直接的に憲法問題とはせず、私法を介して間接的に適用していくという規範になります。

「憲法違反」という結論は出ず、「憲法の趣旨に反しているので違法」というイメージです。この「違法」というのは、民法90条違反(公序良俗違反)とか民法709条違反(不法行為)などです。ですから、判決的には無効だったり損害賠償が発生するようなことになります。

理由は「私的自治の原則」です。一般社会にむやみに憲法が介入していくのはよろしくないでしょう、私人間の取り決めは、できるだけ私人間を尊重するべきという価値判断ですね。

ただし、これは原則であって、例外的に直接的に適用できると解されている規定があります。

  • 15条4項(投票の秘密)
  • 18条(奴隷的拘束の禁止)
  • 27条3項(児童の酷使の禁止)
  • 28条(労働基本権)

この私人間効力の間接適用説を最初に掲げた裁判が「三菱樹脂事件 昭48.12.12」の最高裁判決です。これ以降、私人間の問題については、一貫して間接適用説を採用しています。

この判例は、憲法の中でもトップクラスの重要且つ有名な判例ですので、ガッツリ準備しておきましょう。

それと、私人間効力としてよく取り上げられる判例が「日産自動車事件 昭和56年3月24日」「昭和女子大事件 昭和49年7月19日」です。日産自動車事件は三菱樹脂事件と同じ私企業の話、昭和女子大事件は私立大学の話です。

いずれも間接適用説ですが、事例・判旨を確認しておくと良いと思います。

判例のまとめ

個々の判例はそれぞれご確認ください。個々では、上記3つの判例の簡単にまとめておきます。

私企業とその労働者

三菱樹脂事件と日産自動車事件は、同じ間接適用説を採用しています。
三菱樹脂事件は、採用の時の話ですね。採用の時の話ですが、少しだけ採用後の話もあります。

  1. 従業員の雇い入れについては、原則として企業の自由であり、たとえ特定の思想信条を有する者を採用を拒否しても、それが当然に違法になることはない
  2. そして、採用に際し、思想信条調査をし、それに関した申告を求めることも違法ではない
  3. ただし、採用後の解雇については、客観的に合理的な理由があって、社会通念上是認されうる場合のみ許される

としています。
採用前と採用後では、採用後はより従業員の人権が保障されるといった感じです。

この流れを受けて日産自動車事件では、間接適用説が採用されていますが、結論は、公序良俗違反で無効です(内容はそれぞれでご確認ください)。

諸事情を比較衡量して、

「定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められない旨認定~性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当~」

としました。

企業側が14条の趣旨に反しているため、公序良俗違反で無効となりました。

私立大学と学生

私立大学の話である「昭和女子大事件」でも間接適用説を採用しています。

いわゆる自由権的基本権の保障規定は、~専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものではない

そして、退学処分については、

実社会の政治的社会的活動にあたる行為を理由として退学処分を行うことが、直ちに学生の学問の自由及び教育を受ける権利を侵害し公序良俗に違反するものではない~

ここは、東大ポポロ事件の判旨を踏襲しており、退学処分が違法であるとはしていません。

退学処分としたのは社会通念上合理性を欠くものとは言い難く~懲戒権者に認められた裁量権の範囲内であるもの~

こちらも、諸事情を考慮すれば、退学処分は致し方ない、あくまで裁量権の範囲内であるとしています。逆にいえば、裁量権を逸脱すれば、それは違法ということになることですね。

私人間効力の問題攻略のポイント

私人間効力については、まずは、判例と併せて間接適用説の理解を深めることが大事になります。
直接適用説については、間接適用説との対比の流れで理解しておきましょう。

国家同視説は、ちょっと詳しく書いてある参考書でないと記載がないかもしれません。一度、肢で出題されているのですが、あまりのめり込まなくても良いと思います。

過去問の流れでサラッと触れておけば良いかもしれません。

あと、それぞれ処分についての規範がありますが、こういうところも読み込んでおかないと、択一問題の肢の正否判定ができなくなる可能性がありますので、とにかく、しっかり判例を読み込んで理解すると良いと思います。