人権と人権のぶつかり合いの仲裁

シマちゃん

ここに出てくるお話は憲法の基本中の基本の話でもあります。違憲審査基準についてはのめり込む必要はないけど、さわりだけでも理解しておいてください。

公共の福祉

「公共の福祉」とは、「人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理(一元的内在制約説)」と定義づけられますが、要は法律・条例です。この法律が人権対人権の衝突を調整するアイテムとなるわけです。


どういうことかというと、法律・条例などを「ルール」と考えればわかりやすいと思います。世の中にはいろんな人がいます。それぞれ立場も違うし考え方も違う。とすれば、各個人個人間では、様々な場面で衝突が起こり得る。人権と人権の衝突です。

これをうまく収めるには、ルールが必要です。ルールがあれば、お互いの人権は尊重しつつ社会秩序は保たれる。人権保障は100%ではないかもしれない。でも、それはお互い様。法律や条例と言った、ルールがあればこそ。

これが「公共の福祉」の考え方です。

「公共の福祉」が憲法にそぐわない?

で、この法律・条例がバランスを欠く場合があるわけです。「ちょっと公平性を欠いているかな」と。ルールに瑕疵があるといいますか、どちらか一方に偏り過ぎている場合があるのです。それはまさに、他方の人権を不当に侵害しているということ。憲法にそぐわない、つまり、違憲の可能性を帯びたルールが存在する場合もある。

この法律の合憲性を審理するうえで、ひな形のようなもの、判断基準があるわけです。この判断基準に実例を当てはめて判断します。これを「違憲審査基準」といいますが、この違憲審査基準、様々あるわけですね。

行政書士試験と違憲審査基準

行政書士試験においては、この違憲審査基準があれこれ正面切って出題されることは今のところありませんが、既に違憲審査基準の知識が役に立つ問題は散見されます。例えば、当サイトでも過去問として取り上げている平成25年度第41問目。これ、別に違憲審査基準について正面から問われている問題ではありませんが、違憲審査基準の知識があればより解答はしやすいです。正解肢を絞り込みやすい。

行政書士試験の憲法においてこの違憲審査基準の話は、まだ高度な部類に入ると思いますが、知っていると役に立つときがある知識として捉えてもらえばいいと思います。

二重の基準とは

この違憲審査基準、人権の性質によって基準が違います。具体的には、精神的自由権と経済的自由権では違う基準を設けます。これを「二重の基準」といいます。

精神的自由権とは10条~14条、19条~21条まで、経済的自由権とは22条とか29条などです。

なぜ基準が2つある?

なぜ、基準が2つあるのか?

21条の表現の自由を例に採るのが最もわかりやすいと思いますが、この表現の自由、民主主義の根本を支えるものといってイメージ沸くでしょうか?

国民の政治的判断は、知る権利や自他含める政治的表現によって形成されています。ですから、表現の自由が正当に機能しないと、その民主主義政治に瑕疵を与えることになります。ちゃんとした情報でないと、誤った判断をする可能性が高いですから。だから、精神的自由権は、できる限り尊重し、判断は国民に委ねるという形が望ましいわけです。

そして、そこに一定の歯止めをかける「公共の福祉」も、できる限り尊重し、制限は必要最低限であるべきということになるのですね。

経済的自由権はどうなの?

経済的自由権も、もちろん大事です。日常的に意識するのは、むしろこちらの方でしょう。

しかし、こちら経済的自由権は、職業は多種多様ですから、あまり自由に、好き勝手にやってもらっては、国民のためになりません。それは、皆さん生活しているのだからお分りなはず。それなりの規制は必要なのです。

精神的自由権はできるだけ尊重、経済的自由権は必要な分は規制。この図式はイメージできるでしょうか?

また、精神的自由権がちゃんと機能していれば、民主制の過程で挽回は十分可能です。

ですから、経済的自由権については、精神的自由権よりも緩やかな審査基準が良いとされているのですね。

2つの審査基準を設けるとどうなる?

審査基準が厳格であれば、計られる「公共の福祉」はより細かく厳しい審査を受けることになりますから、違憲が出やすくなります。

逆に、審査基準が緩やかであれば、「公共の福祉」は目盛りの大きめの、比較的大らかな審査を受けることになるわけで、合憲が出やすくなるということになるのですね。

二重の基準論

シマちゃん

上の図のイメージは非常に大事です。厳しいと違憲が出やすい、緩やかだと合憲になりやすいということはちゃんとイメージできるようにしましょう。

判例

判例ですが、積極的に二重の基準論があると宣言しているわけではありませんが、明らかにそれを示している判旨は存在します。経済的自由権の22条の職業選択の自由に関する判例で、

 憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定しているものということができ、個人の経済活動の自由に関する限り、個人の精神的自由等に関する場合と異なつて、右社会経済政策の実施の一手段として、これに一定の合理的規制措置を講ずることは、もともと、憲法が予定し、かつ、許容するところと解するのが相当

「小売市場距離制限事件 昭和47年11月22日最高裁判決」

というものがあり、2重の基準論の存在を明らかにしています。積極的でない、といったのは、精神的自由権の判例ではそのような判旨はまだないからです。審査基準は、精神的自由権内でも経済的自由権内でも複数ありますので、そのへんはそれぞれチェックしておいてください。

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